【最新版】EC市場をデータで読み解く - 国内BtoC-EC市場規模は20兆円超の大台へ -

【最新版】EC市場をデータで読み解く - 国内BtoC-EC市場規模は20兆円超の大台へ -

経済産業省が2022年8月に公表した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2021年における国内のEC市場(物販)は伸長率8.61%増の13兆2,865億円でした。前年の2020年は市場規模が算出されるようになった2014年以降で、最も高い伸長率21.71%を記録したため、伸長率が鈍化したように見えますが、2019年以前のデータも踏まえると引き続き物販ECの市場は成長傾向にあります。EC化率は前年から0.7ポイント上昇し、8.78%に拡大しました[1]

また、2021年は旅行サービスや飲食サービスなどのサービスECの市場が若干の増加に転じ、EC市場全体でコロナ影響前の2019年を上回る数字となっています。

EC市場はまだまだ成長を続けており、その環境は目まぐるしく変化しています。そのなかで事業を成功させていくには、EC市場の経年的な変化を把握した上で、トレンドをおさえる必要があります。本記事では、「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」を基に、BtoC-ECを中心としたEC市場の主な動きを解説します。また、2022年以降のEC市場のトレンドを考察します。

[1]EC化率:「電子商取引に関する市場調査」におけるEC化率は、物販系ECの市場規模と政府統計などをもとに算出したBtoC分野の財(サービスECやデジタルコンテンツEC含まず)の商取引市場規模から算出したもの。

2021年の国内BtoC-EC市場規模は20兆円超の大台へ

BtoC-EC市場には「物販系分野(以下、物販EC)」「サービス系分野(以下、サービスEC)」「デジタルコンテンツ系分野(以下、デジタルコンテンツEC)」の3つの分野があります。各分野の2021年の市場規模は次のとおりです。

BtoC-EC市場の内訳(2021)

注目ポイントは、2021年のBtoC-EC市場規模が、新型コロナウイルス感染拡大の影響が強まる以前の2019年を超えた点です。上記3分野を合計した市場規模は20兆6,950億円で、初めて20兆円の大台に乗り、前年比7.35%増となっています。

物販ECは2019年から2020年にかけて市場規模を大きく伸ばしており、2021年においても成長を続けています。これに加え、サービスECの市場規模が、2019年のレベルには戻っていないものの、2020年に比べると若干伸びており回復傾向にあると思われます。結果として、BtoC-EC市場全体では2021年は2019年を上回る市場規模となりました。

BtoC-EC 市場規模の経年推移(単位:億円)

BtoC-EC市場規模の経年推移

出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」p.7,2022年8月

外出機会が増えてもEC利用ニーズは継続

物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移

物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移

出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」p.5,2022年8月

2021年の物販ECの変化を見るにあたり、おさえておきたいのが、2020年の物販ECの市場規模の拡大です。2020年の物販ECの市場規模は前年比21.71%増で、これはそれまでの伸長率と比較すると突出した数字でした。この主な要因が、2020年春以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で巣ごもり消費が拡大したことです。

2021年の物販ECの市場規模は前年比8.61%増で、2020年ほどではないものの市場の成長は続いています。この点から、2020年に比べて消費者の外出機会が増えた2021年においても、EC利用の需要は減っていないことが窺えます。外出自粛が続いた時期に消費者がECサイトを利用する機会が増えた結果、より多くの消費者にとって、ECサイトという購入チャネルが一時的なものではなく、平時でも活用できる一般的なものとして定着したと考えられます。

例えば、外出自粛期間にECサイトで購入するようになった日用品は外出機会が増えてもそのままECサイトで購入を続ける、商品を購入する際にまずECサイトで検討するといった消費者が増えたと考えられます。また、日本の個人消費における物品購入は概ね横ばいで推移しており、そのなかで物販ECは高い成長率を維持している注目の市場といえます[2]

[2]参考:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 3.1.3 個人の消費動向」p.23,2022年8月

物販系分野のBtoC-EC市場規模(カテゴリ別)

物販系分野のBtoC-EC市場規模(カテゴリ別)

出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」2022年8月

2021年の物販ECをカテゴリ別に見ると、市場規模が大きい順に「食品、飲料、酒類」、「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等」、「衣類・服装雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」となっています。2020年と比べると「衣類・服装雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」の順位が入れ替わっていますが、それ以外に大きな順位変動はありません。

上位4カテゴリの市場規模は2020年に初めて2兆円を突破しており、2021年も引き続き成長を続けています。これら4カテゴリの市場規模合計で物販ECの73%を占めています。

1世帯あたりの財(商品)およびサービス支出の年間支出金額(単位:万円)

1世帯あたりの財(商品)およびサービス支出の年間支出金額(単位:万円)

出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」p.25,2022年8月

物販ECの変化を見るときに合わせて参考にしたいのが、総務省統計局の家計調査をもとに作成された上表「1世帯あたりのカテゴリー毎の年間平均支出金額」です。このデータでは、EC以外も含めた商品カテゴリごとの年間消費額(1世帯あたり)が分かります。

上表において、「食品、飲料、酒類」カテゴリにおける2021年の1世帯あたりの年間平均支出金額は、2019年に比べて3.9%増加しています。そして、物販ECにおいてものカテゴリ毎の市場規模と照らし合わせて考えると、「食品、飲料、酒類」カテゴリの市場規模全体が拡大しています。するなかで、つまり、「食品、飲料、酒類」カテゴリは、市場全体の成長のなかでECの市場規模も成長していることが伺えます。

この傾向は2020年から続いており、これらのカテゴリは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で自宅で過ごす時間が増えたなかで、需要の高まったカテゴリといえます。

一方、上表において「化粧品等」「衣類・服飾雑貨」カテゴリにおける2021年の1世帯あたりの年間平均支出金額は、2019年に比べて減少しています。物販ECにおいては、これらのカテゴリの2021年の市場規模は拡大していることから、市場全体が縮小しているなかで、販売チャネルが実店舗からECにシフトしていることが伺えます。ここにも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が見られます。

旅行、飲食の市場規模縮小が続くサービス系分野

サービス系分野のBtoC-EC市場規模

サービス系分野のBtoC-EC市場規模

出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」2022年8月

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の防止策として旅行や外食、イベントの自粛が求められ、サービスECの「旅行サービス」「飲食サービス」「チケット販売」の分野で、市場規模が大幅に縮小しました。

この傾向は2021年も続いており、「旅行サービス」の市場規模は前年比9.62%減の1兆4,003億円、「飲食サービス」は前年比17.36%減の4,938億円となっています。自粛が求められるなかでも利用できる新たなサービスも生まれていますが、これらの分野の市場規模が本格的に回復するには、新型コロナウイルス感染症流行のさらなる沈静化が待たれます。

「チケット販売」については、2019年の市場規模までは戻っていないものの、前年比67.01%増の3,210億円と回復傾向にあります。これは、2021年の後半にイベント開催に関する規制緩和が行なわれたことが大きく後押ししています。また、インターネットを利用したライブ配信も注目されています。

サービスECのなかで、新型コロナウイルス感染症拡大という状況をプラスに転じて市場規模を拡大している分野が、2020年から調査対象として新たに独立して掲載された「フードデリバリーサービス」です。2021年の市場規模は、前年比37.48%増の4,794億円となっています。

新型コロナウイルス感染症拡大が沈静化して、消費者の外食頻度が回復することで成長が鈍る可能性もありますが、フードデリバリーという方法に消費者がなじんだことは、外食産業において大きな変化です。今後、消費者動向を注視しておきたい分野といえます。

デジタルコンテンツECは二桁成長が続く

デジタル系分野のBtoC-EC市場規模

デジタル系分野のBtoC-EC市場規模

出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」2022年8月

デジタルコンテンツEC市場は、2020年、2021年と大幅成長が続いています。これは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費の影響が大きいと考えられます。デジタルコンテンツECで最も市場規模が大きい分野は「オンラインゲーム」で、2021年の市場規模は前年比7.82%増の1兆6,127億円となり、デジタルコンテンツEC全体の約6割を占めています。

また、デジタルコンテンツECでは、定額でコンテンツを好きなだけ利用できるサブスクリプション型サービスも市場拡大に寄与し、継続的な成長につながっています。

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2022年 EC市場のトレンドを考察

実店舗の位置づけ・役割の変化

2020年春以降の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、EC事業に新たに参入する事業者、EC事業を本格化する事業者が増えました。そのなかで、実店舗の位置づけや役割が見直されています。具体的には、実店舗での接客ノウハウのECサイトへの応用や、実店舗からECサイトへの積極的な送客などの取り組みが見られます。

実店舗での接客では、店員と顧客の双方向のコミュニケーションが成り立ちますが、ECサイトではサイト運営者から顧客への一方向の情報発信となってしまうことも多いです。その解決策のひとつが、オンライン接客です。

オンライン接客は、従来のチャットによる問い合わせ対応と、顧客の属性や行動履歴に応じたポップアップ配信という2つの方法が主流でした。そういった従来の方法に加えて、商品やサービスに関する専門知識をもった実店舗のスタッフが、ビデオ通話などで顧客一人ひとりの接客を行い、ECサイトでの購入につなげる方法が、アパレルや化粧品などの業種で見られるようになっています。

また、実店舗にあまり歓迎されないことが多かった、商品を実店舗で確認して購入はECサイトで行う「ショールーミング」という消費者行動が、ECサイトへの有効な送客手段として見直されています。実店舗は商品を体験する場として、そこでの顧客データを商品開発に活用しながら、購入はすべてECサイトに送客するという取り組みも見られます。

このように、ECサイトや実店舗をはじめとしたあらゆる販売チャネルが連携して顧客との接点を作り、一貫性のある購買体験を顧客に提供するビジネス戦略は、「オムニチャネル」と呼ばれます。オムニチャネルという言葉は以前からありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、最終的にオンラインで購入することを前提として、オフラインの顧客との接点を組み立てるという動きがあります。

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BOPISによる実店舗の役割

実店舗の位置づけ・役割の変化とも関係しますが、ECサイトで購入した商品の受け取り方法として、「BOPIS(ボピス)」という受け取り方法が注目されています。「BOPIS」とは「Buy Online Pick-up In Store」の略で、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることを意味します。

BOPISは、ECサイトを利用する消費者にとって、送料負担なく好きなタイミングで商品を受け取れるというメリットがあります。元は実店舗を利用していた消費者も、BOPISを利用することで、在庫切れの心配なく、ほしい商品を確実に確保できるという点もメリットの一つです。また、新型コロナウイルス感染症拡大の防止策として、実店舗での滞在時間を減らせることもメリットといえます。

ECサイトや実店舗を運営する事業者にとっても、複数のメリットがあります。まず、物流コストの低減が大きなメリットです。BOPISでは、ECサイトでの注文商品も実店舗への納品と一緒に配送することで、不在宅配などのコストもかかりません。また、消費者が実店舗に足を運ぶ機会を作ることができるので、実店舗スタッフによる接客の機会を作れることもメリットです。

さらに、ECサイトを利用する消費者と実店舗に来店する消費者のデータを紐づけて一元管理することで、より効果的なマーケティングを行うことができ、顧客により良い購買体験を提供することができます。

なお、BOPISと似た言葉に「Click & Collect(クリック・アンド・コレクト)」があります。Click & Collectは、ECサイトで購入した商品を自宅以外で受け取ることで、受け取り場所は実店舗だけでなく、コンビニや宅配ロッカーなどさまざまです。消費者が好きなタイミングで商品を受け取れるというメリットはBOPISと同様ですが、事業者にとって、実店舗と連携できるメリットはありません。

クイックコマースによる物流の変化

2020年、2021年と大きく市場規模を拡大しているフードデリバリーでは、「クイックコマース」というサービスが注目されています。これは、配達員がバイクや自転車により食品や日用品などを注文から数十分で届けるサービス形態です。新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、外出自粛が進められていた時期に利用が拡大したほか、都市部を中心に子育てや介護などで外出の時間が取りにくい消費者のニーズに合致して利用が進んでいます。

例えば、食品小売事業者と提携して食品を配達するUber Eatsは、クイックデリバリーの代表的なサービスです。また、クイックデリバリーの普及を受けて、食品以外に日用品分野を取り扱うサービスも登場しています。小売店事業者との提携ではなく、一般には商品を販売していない、ダークストアと呼ばれる配達専用の店舗から配送を展開するサービスもあります。

BOPISやクイックコマースなどのトレンドからは、ECの配送の変容が窺えました。商品を物流センターや近隣店舗から出荷して、顧客の自宅に届けるという配送方法は、複数ある配送方法の一つでしかなく、顧客の属性やニーズに応じた配送方法を選べることが、今後はより重要になっていくのかもしれません。

セキュリティ対策の強化が求められる

インターネット利用における不安の内容

※インターネットを利用していて「不安を感じる」または「どちらかといえば不安を感じる」と回答した個人に占める割合

出典:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」p.42,2022年8月

ECの利用が増えるなか、EC事業者やEC支援事業者、決済事業者が強化を求められるのが情報セキュリティ対策です。上図からも分かるとおり、インターネット利用において多くのユーザーが不安に思っているのが、「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」です。

ECサイトにおいて情報漏えいが起きると、EC事業者の信頼は一気に失われ、調査や補償のために多大なコストがかかります。また、消費者がECサイト全体に対して不安を抱き、ECサイトの利用者減少にもつながりかねません。

ECサイトの情報漏えいの主要な原因としては、次の3点があります。

  • (1)ネットワークやサーバへの不正アクセス
  • (2)アプリケーションのセキュリティ上の不備を利用した攻撃
  • (3)データ紛失などの人為的ミス

これらを念頭においてセキュリティ対策を行う必要があります。(1)および(2)は、ECサイト構築システムに関連するので、不安な点があればシステムベンダーに相談しましょう。(3)については、社内で個人情報をどのように取り扱っているのか、その過程で情報が漏えいする危険性はないのか、見直しましょう。社員一人一人の意識を高めることもセキュリティ対策の重要なポイントです。

詳しくは以下の記事も参考にしてください。

ECサイトの情報漏えい対策とは?

ECサイトの情報漏えい対策とは?

ECサイトを運営していると、さまざまなセキュリティリスクに直面します。特に注意が必要なのは「会員情報の漏えい」です。今回は、ECサイトにおける情報漏えいリスクの原因と対処法を解説しています。

情報漏えいの防止策と合わせて、BtoC-ECの代表的な決済手段であるクレジットカードについて、不正利用をさせない対策も求められます。一般社団法人日本クレジット協会によれば、クレジットカード不正による被害額は2019年まで増加傾向にあり、2020年は前年比で減少となったものの、2021年は330.1億円という過去最大の被害額となっています。

日本クレジットカード協会では、「クレジットカード・セキュリティガイドライン」をまとめ、ECサイトの不正利用防止策として、以下のような対策を求めています。

  • ・オーソリゼーション処理の体制整備、管理者の注意
  • ・自社での不審なカード利用の把握と対策、不正利用対策の課題検証
  • ・契約カード会社・決済サービスプロバイダ(PSP)との迅速な情報共有

また、そもそもクレジットカード情報を漏えいさせないための対策として、ECサイトにおけるカード情報の非保持化またはPCI DSSに準拠した情報の取り扱いが、法律により義務づけられています。

外出機会が増えるなか実店舗の活用がカギ

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で市場規模が減少した国内BtoC-EC市場ですが、2021年は再び拡大に転じ、この流れは2022年も続くと考えられます。特に、物販ECやデジタルコンテンツECの分野では、市場の大きな成長が続いています。外出自粛が求められた期間にECの利用が日常の一部となったため、今後もEC利用のニーズは継続すると考えられます。

また、物販ECでは実店舗からECへと、消費者が利用する販売チャネルの移行も見られます。オンライン接客やショールーミング、BOPISなどのトレンドからも窺えるように、実店舗とECが連携して互いの強みを活かし合うことで、双方に良い影響をもたらします。その際、実店舗とECの顧客データを統合し、有効活用することが重要です。