ヘッドレスコマースとは?従来のECとの違いを解説|5分でわかるEC用語

ヘッドレスコマースとは?従来のECとの違いを解説|5分でわかるEC用語

消費者の行動が多様化し、UX(User eXperience:顧客体験)の向上が重要視される中で、ヘッドレスコマースというECの設計思想が登場しています。ヘッドレスコマースでは、従来のモノリシック型のECサイトの構築方法と比べて、UI/UX改善が容易になる点が大きなメリットです。本記事では、ヘッドレスコマースとは何なのか、従来のECサイトの構築方法との違いを比較しながら、基本的なポイントを解説します。

ヘッドレスコマースとは

ヘッドレスコマースとは、ECサイトのフロントエンドとバックエンドを分離する技術や考え方のことです。ECサイトの仕組みは、以下のように、フロントエンドとバックエンドに分けて考えることができます。

フロントエンド

UI(User Interface)と呼ばれる、ECサイトの仕組みの中でユーザーとの接点となる部分(PCやスマートフォンで閲覧できる部分)を指します。

バックエンド

ECシステムの基盤となる部分で、決済情報、顧客情報、受注情報、在庫情報、配送情報などを管理するシステムを指します。

従来のモノリシック型のECサイトは、フロントエンドとバックエンドシステムが一体の設計になっており、バックエンドシステムでフロントエンドも管理するのが一般的です。一方、ヘッドレスコマースでは、下図のように、フロントエンドの管理をバックエンドシステムから分離して、APIで連携します。ヘッドレスコマースの「ヘッド」とは、「フロントエンド」のことを指します。

ヘッドレスコマースとモノリシックコマース

ヘッドレスコマースの構成

また、バックエンドシステムに影響されずにフロントエンドを管理できるため、ブランド別に複数のECサイトを運用する場合やECサイトの他にアプリやSNS、チャットボット、AR/VRなど様々なツールやデバイスを持つ場合でも、ひとつのバックエンドシステムでの一元管理を実現します。

ヘッドレスコマースはECの新たな選択肢

ヘッドレスコマースという言葉が日本のEC業界で話題にのぼるようになったのは、2019年頃です。ヘッドレスコマースの大きなメリットは、大きく2つあります。それは、UXの改善が容易になることと、開発において納期短縮につながることです。

UXの改善

従来のECでは、フロントエンドはバックエンドのシステムに依拠するため、必ずしも希望通りのフロントエンドが設計できませんでした。例えば、ECシステム側で用意されたデザインテンプレートに基づく限られた範囲でしかサイトデザインを変更できない、カートに追加でレコメンド機能を実装し難いなどです。

しかし、ヘッドレスコマースであれば、バックエンドシステムに影響を受けることなく、柔軟なフロントエンドの設計が可能です。

また、消費者行動が多様化する中で、スマホアプリやSNSなど、ECサイト以外の販売チャネルでの購入ニーズも増えています。そういった販売チャネルを新しく追加する場合も、ヘッドレスコマースであれば迅速に対応可能で、複数の販売チャネルでの情報をひとつのバックエンドシステムに集約できます。

このような点から、ヘッドレスコマースを導入することで、顧客にとってより快適なUXを提供することが可能になります。ただし、フロントエンドとバックエンドのAPI連携にあたっては、フロントエンド側を対応させるための調整が必要になる場合があり、専門知識が求められます。

開発における納期短縮

従来のモノリシック型のECサイトでは、フロントエンドとバックエンドの開発は一体で、切り離して考えることはできません。しかし、ヘッドレスコマースでは、フロントエンドとバックエンドの開発をそれぞれ別のチームや外注先などに依頼して、並行して開発を進めることができます。これにより、納期短縮が見込めます。

例えば、フロントエンドはフロントのデザインが得意な制作会社に依頼して、バックエンドは基幹システムの外部連携開発が得意なシステム会社に依頼するなど、マルチベンダーでの開発も可能です。開発を外注する際、フロントエンドとバックエンド、それぞれを得意とするところに依頼できることもメリットです。

ヘッドレスコマースはこんなECにおすすめ

ここまでの解説を踏まえると、ヘッドレスコマースは、以下のようなECにおすすめといえます。

  • ・複数のECサイトを運営したい
  • ・モバイルアプリやSNSなどECサイト以外の販売チャネルも展開したい
  • ・現状のECのシステムで、やりたいことが制限されることが多い
  • ・ユーザー行動をこまかく分析して、UX改善を重ねていきたい

例えば、企業サイトへのアクセスが多いのでそこでも商品を閲覧・購入できるようにしたい、ECサイトとは別にLPを作成して広告からのアクセスをそのまま購入につなげたい、会員情報やクーポン・ポイントなどは共通化した上で顧客層や商品・ブランドによって異なるコンセプトの販売チャネルを用意したい、といった場合は、ヘッドレスコマースと親和性が高いでしょう。

ヘッドレスコマースを行うとなると、最初の開発・テストにはコストがかかります。その分、それに見合った利益を出す運用が求められます。そのためには、EC運用を行う中で、ユーザー行動を細かく分析して、UX改善を重ねることのできる体制が必要です。

現状、ヘッドレスコマースは、開発のための予算や人員を確保できる中規模以上の企業に向いているといえます。ただ、バックエンドシステムやAPI連携に関する知識があり、対応できるエンジニアがいる場合は、規模に関わらず検討してみると良いでしょう。

EC市場の拡大に伴い、EC形態は多様化しています。オムニチャネルやOMOなどが注目されているように、ECサイトを運営して事業を成長させるためには、実店舗やその他複数チャネルとの連携が重要です。ヘッドレスコマースの考え方自体は、そのようなチャネルの多様化に適しており、今後より簡単にヘッドレスコマースに対応できるシステムやサービスが登場すれば、一気に広まる可能性があります。

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