ターゲットやペルソナとは違う顧客像「想定ユーザー」設定でECサイト改善!

ターゲットやペルソナとは違う顧客像「想定ユーザー」設定でECサイト改善!

マーケティング戦略や施策を考える際に、対象となるユーザーを絞り込む考え方として、「ターゲット」と「ペルソナ」があります。

この2つのマーケティング用語について、どのように使い分けるべきなのか、曖昧な場合もあるのではないでしょうか。本記事では、まず、ターゲットとペルソナそれぞれの意味と、2つの用語の違いを解説します。

そのうえで、ECサイト改善における弊社独自の考え方として、「想定ユーザー」をご紹介します。想定ユーザーを設定することは、ECサイト特有のユーザー行動をより深く理解して、そのユーザーの行動に適したECサイトへの改善に役立ちます。

本記事では、なぜターゲットとペルソナだけでなく想定ユーザーの設定が必要なのかを解説したうえで、想定ユーザー設定のために必要な7つの軸を紹介します。

一般的なユーザー設定 - 「ターゲット」と「ペルソナ」

ターゲットとは

マーケティングにおけるターゲットとは、実在するユーザーの集団を、年齢や性別などで分類して、商品・サービスを訴求したいユーザーのセグメントを絞り込んだものです。

ECの事業戦略立案でも、まずはターゲットを設定することが重要です。ターゲット設定を行うことで、どのようなユーザー群にアプローチを行い、商品・サービスを届けたいのか、大きな方向性を定めることができます。

ペルソナとは

マーケティングの施策立案では、ペルソナを設定することが推奨されます。ペルソナとは、自社の商品・サービスを利用してくれそうな、典型的な顧客像です。必ずしも実在の人物である必要はなく、架空の人物像でも構いません。

ペルソナ設定では、ターゲットで設定した分類に加え、趣味・価値観・生活習慣・家族構成など、具体的に一人の人物を思い描けるような、詳細な設定が行われます。

ペルソナは架空の人物像で構いませんが、「こうだったらいいな」という想像で設定するのではなく、自社の顧客データや市場調査、ユーザーへのアンケートまたはヒアリングなど、定量データ・定性データを基に設定します。

また、ペルソナを設定するには、自社の既存顧客や見込み顧客のことを調べる必要があるため、顧客についての理解を深めることができます。

そのうえで、マーケティング施策に関わるメンバー全員で同じペルソナを共有することで、「何を目的として誰に対して施策を実施しているのか」という点でズレがなくなり、施策の立案から実行、改善まで、PDCAをスムーズに回すことができます。

ターゲットとペルソナの違い

ECサイトにおけるターゲットとペルソナ

ターゲットは、ユーザー全体に対して広く浅く絞り込みを行った、実在する集団です。

一方のペルソナは、ターゲットからさらに深く狭く絞り込みを行った、一人の人物です。EC事業においても、ターゲットもペルソナもどちらも重要です。まずはターゲットを設定して、そこからさらに軸を絞り込んでペルソナを設定するとスムーズでしょう。ペルソナがどういった商品やメッセージに興味を持ち、購入したいと思ってもらえるかを商品開発やプロモーション活動で探り、施策の最適化を実現することがペルソナマーケティングの目標とすべきポイントです。

ペルソナは、施策に応じて複数設定することがあります。ひとつのターゲットの中にも、さまざまなペルソナが含まれています。

例えば、新規獲得のための施策とリピート獲得のための施策とでは、最適なペルソナが異なります。施策の効果が出ない場合は、施策と共にペルソナも見直す必要があります。

また、市場や顧客は変化するものなので、ターゲットとペルソナのいずれも、定期的な見直しが必要です。

ECサイトならではの設定 - 「想定ユーザー」

HIT-MALLの提供元であるアイテック阪急阪神では、ECサイト改善において、ECサイト特有のユーザーとして、ターゲットとペルソナの中間に位置するような「想定ユーザー」の設定を行っています。

想定ユーザーとは

ECサイトの「想定ユーザー」

想定ユーザーは、ECサイト改善において活用する、弊社独自のユーザー設定です。

想定ユーザーは、ターゲット設定に用いる属性や行動に加え、ECサイトでの購買に関する軸を用いて設定します。ペルソナ設定ほど個人的な特徴までは掘り下げず、一方で、ECサイトで何を探しているのか、何をきっかけに自社のECサイトにたどりついたのかなど、ECサイトの利用シーンに関する軸を設定します。

ターゲットは広く浅い集団、ペルソナは狭く深く絞り込んだ人物像で、想定ユーザーの絞り込みはその中間に位置するセグメントといえます。

想定ユーザー設定にあたっては、ペルソナ設定と同様に、自社の顧客データや市場調査、ユーザーへのアンケートやヒアリングなど、定量データ・定性データを基にすると、より実態に近づけることができるでしょう。

なぜターゲットやペルソナではなく、想定ユーザーを設定するのか

想定ユーザーを設定するメリットとしては、まず、顧客についての理解が深まることや、ECサイト運営に関わるメンバー間で施策の方向性や内容について認識のズレをなくし、PDCAをスムーズに回せるといった点があげられます。これらはペルソナ設定のメリットと同様です。

そして、ペルソナではなく想定ユーザーを設定する理由として、ユーザー目線でECサイトをチェックしやすくなるという点があげられます。

一般的なペルソナの設定項目では、ECサイトでの購買に関する行動に特化して設定することはありません。また、ECサイト改善を目的とする場合、一般的なペルソナ設定ほど個人的な特徴を詳しく掘り下げるよりも、ECサイトにおいてどのような行動をするかを軸に考える方が、サイト改善においては効果的でしょう。

ECサイトでの行動という点に特化した軸で設定するのが、想定ユーザーです。

ECサイトの運営担当者からすると、自社のECサイトのどこにどんな情報があり、目的の情報にたどりつくにはどのような導線をたどれば良いのかは、すぐに分かります。この状態では、ECサイトを改善しようと思っても、ユーザーにとって分かりにくい部分や使いづらい部分に気づきにくくなっています。

そこで、想定ユーザーを設定して、運営担当者の目線から外れて、想定ユーザーの目線でECサイトをチェックします。想定ユーザーであればどのようにECサイトを訪問し、ECサイト上でどのように行動するのか、その中で分かりにくい部分、使いづらい部分や探しにくい箇所はどこかを考えます。

想定ユーザーを設定する際の7つの軸

想定ユーザーを設定する際の7つの軸

想定ユーザーの設定は、上記7つの軸で行うと良いでしょう。

自社の顧客データや市場調査を踏まえて、自社の商品・サービスを利用してほしい典型的な人物像を設定します。これら7つの軸を基に作成した想定ユーザーの例として、次のような設定が考えられます。

ECサイトの想定ユーザーの例

想定ユーザーの設定ではまず、自社のECサイトにおいて比較的よく行われているであろう購入シーンを設定します。

想定ユーザーを設定できたら、その想定ユーザーの目線に立つことを徹底して、ECサイトのチェックを行いましょう。

まとめ

ECの事業戦略や施策の立案・実行においては、ターゲットとペルソナを設定することが重要です。本記事で紹介したとおり、まずはターゲットを設定してから、さらに個人的な特徴で絞り込んでペルソナを設定するとスムーズです。

ターゲット・ペルソナともに、自社の顧客データや市場調査など、データを基に行いましょう。設定する過程で、自社の顧客についての理解も深まります。

また、ターゲットとペルソナのほかに、EC運営における弊社独自の設定として、「想定ユーザー」の設定をおすすめしています。想定ユーザーは、ターゲットからさらに、ECサイトでの購買に関する軸で絞り込んだセグメントです。想定ユーザーの設定は、ユーザー目線に立ってECサイトをチェックするために役立ちます。

想定ユーザー設定のための軸の例として、大きく7つをご紹介しました。それらの軸に基づき、まずは自社のECサイトで典型的なユーザーのセグメント「想定ユーザー」を設定しましょう。その後に、想定ユーザーになったつもりで、ECサイトの導線やコンテンツ配置、カテゴリ構造の見直しなど、自社のECサイトをチェックして課題を洗い出し、できるところから改善を実施します。

現在のシステムではすぐにできない対応などは、次期ECサイトのリニューアルの検討項目にするなどして、段階を踏んでEC事業のテコ入れを進めていきましょう。

ECサイト改善は、KPIを設定したECサイト改善方法もあります。ぜひご参考になさってください。

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「想定ユーザー」を設定した具体的なECサイト改善例については、本セミナー動画内にて説明しています。ぜひご覧ください。

FAQ

Q1: ECサイト改善における「ターゲット」「ペルソナ」「想定ユーザー」とは何ですか?

A1: マーケティング戦略において顧客を絞り込むための3つの異なる概念です。

ターゲット:実在するユーザーの集団を年齢や性別などで分類し、商品・サービスを訴求したいユーザーのセグメントを広く絞り込んだものです。EC事業の大きな方向性を定める際に重要となります。

ペルソナ:ターゲットからさらに深く狭く絞り込んだ、自社の商品・サービスを利用してくれそうな典型的な顧客像を指します。架空の人物像で構いませんが、顧客データや市場調査に基づき、趣味・価値観・生活習慣・家族構成など、具体的な一人の人物を思い描けるよう詳細に設定されます。マーケティング施策の立案や実行において、関係者間の認識のズレを防ぎ、PDCAをスムーズに回すのに役立ちます。

想定ユーザー:ECサイト改善に特化した独自のユーザー設定で、ターゲットとペルソナの中間に位置します。ペルソナほど個人的な特徴を深掘りせず、ECサイトでの購買に関する軸(例:ECサイトで何を探しているか、何をきっかけに自社サイトにたどり着いたか)に焦点を当てて設定されます。ECサイト特有のユーザー行動を深く理解し、それに基づいたサイト改善に役立ちます。

Q2: 「ターゲット」と「ペルソナ」はどのように使い分けるべきですか?

A2: ターゲットは「誰にアプローチしたいか」という大まかな方向性を定めるために、ユーザー全体を広く浅く絞り込む際に使用します。例えば、「20代の女性」といったように、実在する集団として捉えます。

一方、ペルソナは、ターゲットで絞り込んだ集団の中から「どのような人物が理想の顧客か」を具体的にイメージし、施策の精度を高めるために使用します。例えば、「都内在住の20代後半、ファッションに敏感でSNSで情報収集を行う会社員」のように、一人の架空の人物として詳細に設定します。

EC事業においては、まずターゲットを設定して方向性を定め、そこからさらにペルソナを設定することで、商品開発やプロモーション活動を最適化し、PDCAサイクルをスムーズに回すことが可能になります。

Q3: なぜ一般的な「ペルソナ」だけでなく、「想定ユーザー」の設定が必要なのですか?

A3: 想定ユーザーは、特にECサイトの改善において、運営担当者がユーザー目線でサイトをチェックしやすくするために必要です。一般的なペルソナ設定では、ECサイトでの購買行動に特化した項目が不足している場合があります。また、ECサイト運営担当者は自社サイトの構造を熟知しているため、ユーザーにとって分かりにくい点や使いにくい点に気づきにくい傾向があります。

想定ユーザーを設定することで、ECサイトでの行動に特化した軸でユーザー像を具体化し、「この想定ユーザーならどのようにECサイトを訪問し、サイト上でどのように行動するか?」という視点でサイトを評価できます。これにより、ユーザーが見つけにくい情報や操作しにくい導線などを発見しやすくなり、より効果的なサイト改善につながります。

Q4: 想定ユーザーはどのように設定すればよいですか?

A4: 想定ユーザーの設定は、自社の顧客データや市場調査、ユーザーアンケート、ヒアリングなどの定量・定性データを基に行うことが推奨されます。具体的には、以下の7つの軸を参考に設定すると良いでしょう。
基本的な属性(年齢、性別、職業など)
ECサイト利用のきっかけ
ECサイトで求めているもの
ECサイトでの主な行動パターン
ECサイト利用における悩みや課題
購買に関する意思決定プロセス
ECサイト外での情報収集源

これらの軸に基づいて、自社ECサイトにおいて典型的に発生する購入シーンを想定し、具体的な人物像を作成します。

Q5: 想定ユーザーを設定することのメリットは何ですか?

A5: 想定ユーザーを設定するメリットは複数あります。

顧客理解の深化:設定の過程で自社の顧客についてより深く理解できます。

認識のズレの解消:ECサイト運営に関わるメンバー間で施策の方向性や内容について認識のズレをなくし、PDCAサイクルをスムーズに回せます。これはペルソナ設定のメリットと共通しています。

ユーザー目線でのECサイトチェック:特にECサイトにおける行動に特化しているため、運営担当者が自身の目線から離れ、想定ユーザーの目線でサイトをチェックできるようになります。これにより、ユーザーにとって分かりにくい部分や使いづらい部分、探しにくい箇所などを効率的に洗い出すことができ、ECサイトの利便性向上に直結します。

Q6: 想定ユーザーは実在の人物である必要がありますか?

A6: いいえ、想定ユーザーは必ずしも実在の人物である必要はありません。ペルソナと同様に、架空の人物像で構いません。しかし、「こうだったらいいな」という想像だけで設定するのではなく、自社の顧客データや市場調査、ユーザーアンケートやヒアリングなどの定量データ・定性データに基づいて設定することで、より実態に近いユーザー像を構築できます。これにより、ECサイトの改善策がより的確なものになります。

Q7: 想定ユーザーを設定した後、ECサイト改善のために具体的に何をすればよいですか?

A7: 想定ユーザーを設定できたら、その想定ユーザーの目線に徹底的に立ち、ECサイトのチェックを行います。具体的には、以下の点に焦点を当てて課題を洗い出します。

導線の確認:想定ユーザーが目的の商品や情報にスムーズにたどり着けるか。
コンテンツ配置の検証:想定ユーザーが必要とする情報が適切に配置されているか、見つけやすいか。
カテゴリ構造の評価:想定ユーザーにとって分かりやすいカテゴリ分けになっているか。
使いづらい点の特定:購入プロセス、検索機能、決済画面などで不明瞭な点や操作しにくい点はないか。

洗い出した課題の中から、現在のシステムで対応可能なものはすぐに改善を実施します。システム改修が必要な大きな課題は、次期ECサイトのリニューアルの検討項目とするなど、段階的に改善を進めていくことが重要です。

Q8: ターゲット、ペルソナ、想定ユーザーの設定は一度行えば完了ですか?

A8: いいえ、ターゲット、ペルソナ、想定ユーザーのいずれも、一度設定したら終わりではありません。市場や顧客の行動、ニーズは常に変化しているため、定期的な見直しが必要です。

特に、マーケティング施策の効果が出ない場合や、ECサイトの利用状況に変化が見られる場合は、設定したユーザー像が現状に合致しているかを確認し、必要に応じて更新することが重要です。これにより、常に最適な戦略と施策を実行し続けることができます。