
「Google アナリティクスのeコマーストラッキングとは?導入手順を解説|EC事業者のためのアクセス分析講座」では、Google アナリティクスのeコマーストラッキング機能の導入手順について解説しました。eコマーストラッキング機能はユーザーのアクセス情報と購買情報を紐づけて分析できるため、ECサイトを運営しているのであれば導入しておきたい機能です。
例えば、ある特定の商品の購入数が急に増加したとしましょう。ECサイトの管理画面からは性別や年齢などのデモグラフィックデータや、購入した商品、決済方法、システムによっては利用したデバイスの傾向までは把握できるかもしれません。しかしそれだけでは、なぜこの商品が急に売れ出したのかまで知ることはできません。
Google アナリティクスにeコマース機能を導入していれば、「Emailからの流入した訪問者がその商品をよく購入している」「Twitterで実施したキャンペーンが対象商品の購入急増につながっている」といった情報まで取得することができます。つまり、アクセス情報と購買情報が紐づくことで推測止まりの分析ではなく、その仮説が正しいかを検証することができるようになります。
このように、eコマース機能を導入することは、①購買に至るまでのユーザーの動向が把握できる、②実施した施策の効果をより詳細に分析することができるといった2つの大きなメリットがあります。
今回はeコマース機能を導入後、どのようにレポートを活用すればよいのか、4つの見方について具体的な例を交えて解説します。
※本記事内での「Google アナリティクス」はUA(ユニバーサルアナリティクス)を指します。
eコマース機能で分析できる指標
eコマース機能では購買情報や商品情報だけでなく、初回訪問から購入までの日数や訪問回数なども分析できます。ここではeコマース機能で確認できる各指標を紹介します。ECサイトの効果を把握するうえで重要な項目ばかりです。
概要
指標 | 内容 |
---|---|
トランザクション数 | 注文された回数 |
eコマースのコンバージョン率 | 1セッションあたりの注文の割合 (=トランザクション数÷セッション数) |
収益 | 注文金額の総額 (送料、税などを設定すれば、それらを含んだ金額で表示) |
平均注文額 | 1注文あたりの平均金額 (=収益÷トランザクション数) |
固有の購入数 | 商品が注文された回数 1注文で複数種類の商品が含まれる場合は、各商品ごとに1とカウント 例)商品A×1、商品B×3、商品C×2を購入 → 各商品ごとに1注文としてカウントされるため3となる |
数量 | 注文された商品の総数 |
商品の販売状況
指標 | 内容 |
---|---|
商品の収益 | 注文された商品の合計金額 |
平均価格 | 注文された商品の平均の金額 (=商品の収益÷数量) |
平均数量 | 商品ごとの1注文あたりの平均注文数 (=数量÷固有の購入数) |
購入までの間隔
指標 | 内容 |
---|---|
購入までの日数 | ユーザーのサイト訪問から注文に至るまでにかかった日数 サイト訪問時点から24時間以内であれば0日となる |
トランザクションまでのセッション数 | 注文に至るまでにサイトを訪問した数 |
購入までの日数は、サイトへ訪問して即時に購入されるのか、時間をかけて購入検討されるのか、商品の特性によって違いが出ます。自社ECサイトの商品にあわせて施策を検討する材料にしてください。
eコマース機能を活用する|EC担当者がおすすめする4つの見方
eコマース機能を導入してデータが蓄積されれば、いよいよデータ分析を行います。ここでは弊社でお客様のECサイト分析を行っているアナリストが、実際に利用しているeコマース機能を活用した4つの見方についてご紹介します。改善につなげるためのポイントもあわせて解説しますので、参考にしてください。
1.チャネル×購買情報
ページ:集客>すべてのトラフィック>チャネル

チャネルと購買情報の組み合わせは、eコマース機能においてスタンダードかつ使い勝手のよい見方です。ECサイト分析の第一歩は、どのチャネルが購買につながりやすいか、購入単価が高いか、リピート率が高いのかなど、チャネルを軸にECサイトの全体像を把握することです。売上につながるチャネルがあれば、そのチャネルの流入を増やす施策を、一方で売上につながりにくいチャネルはボトルネックを探して改善する、予算や人的リソースの配分を弱めるなどといった対策を検討できるでしょう。
ECサイトの最終目標は売上アップです。訪問数が増加しても売上が伸びないのであれば、その施策が成功したとは言えません。売上アップにつながる課題を効率的に発見するという意味で、チャネルと購買情報の組み合わせは非常に使い勝手がよい見方と言えます。
チャネルと購買情報を組み合わせるには、チャネルページの画面右、コンバージョンのプルダウンから「eコマース」を選択してください。eコマースの情報(コンバージョン率、トランザクション数、収益)が表示されます。

Google アナリティクス チャネル×コンバージョン(eコマース)
チャネルごとの収益を見ることができるので、収益順に並べ替えると売上への貢献度の高いチャネルを確認できます。逆に、収益につながっていないチャネルがあれば、直帰率、コンバージョン率など改善できる点がないか探してみてください。
商材にもよりますが、ECサイトの一般的なコンバージョン率は1~3%程度と言われています。コンバージョン率が目安より低いチャネルがあれば、まずはサイト平均の直帰率と比較して、著しく直帰率が高くなっていないか確認しましょう。直帰率が高い場合、まずは対象チャネルのランディングページを見直します。直帰率に問題がなければ、サイト内を回遊した後の遷移先ページで離脱している可能性があります。対象チャネルの離脱ページを確認することで課題を発見できるかもしれません。
また、コンバージョン率が高いチャネルは、流入してから購入されやすいということなので、セッション数を伸ばす施策によって売上を効率よく上げることができるでしょう。ただし、セッション数が増えると相対的にコンバージョン率が下がってしまうことがあるので、同時にコンバージョン率を上げる(保つ)施策も実施するとより効果的です。
このように、チャネルと購買情報を掛け合わせることで、どのチャネルで施策を実施すればよいかの判断材料を得ることができます。このデータを取得するだけでもeコマース機能を導入する価値があると言えます。
2.ランディングページ×購買情報
ページ:行動>サイトコンテンツ>ランディングページ

Google アナリティクス ランディングページ×コンバージョン(eコマース)
ランディングページと購買情報を掛け合わせることで、流入の起点となったページからどれだけ収益につながったのか、効果を把握することができます。収益順に並べ替えを行えば、特に売上に貢献しているランディングページを見つけることができます。
例えば、新商品のキャンペーンのために特集ページを制作して集客施策を行う際、キャンペーンの実施にはページの制作費や広告費など様々な費用が発生しますが、eコマース機能を導入しておけばランディングページごとに収益を確認できます。収益を確認できることは、ページごとの貢献度を確認するだけでなく費用対効果を測るうえでも有効です。

Google アナリティクス ランディングページ(特集ページで絞り込み)×【降順】eコマースのコンバージョン率
その他にも、コンバージョン率で並べ替えることで、収益につながりやすいページを把握できます。ECサイト内のすべてのページを一度に確認するのは難しいので、URLから特集ページなど一部に絞り込み、その中で最もコンバージョン率の高いページを探してください。対象ページの特集テーマやデザイン、構成、CTAボタンの見せ方など、効果的だと思われる要因を探し、その他のページ改善に活かしましょう。
また、セカンダリディメンションから「参照元/メディア」を選択するとより具体的な課題を発見できることもあります。多くの場合、同一の特集ページでも流入元によって、コンバージョン率に差があります。流入元のページとランディングページ(特集ページ)の関連性が高ければ、コンバージョン率は高くなり、関連性が低ければ直帰されやすく、コンバージョン率も低くなります。最もコンバージョン率の高い組み合わせを見つけ、他の流入元や他特集ページへの誘導方法を改善する参考にしましょう。
便利な加重並び替え機能

Google アナリティクス ランディングページ(特集ページで絞り込み)×【加重並べ替え】eコマースのコンバージョン率
また、コンバージョン率を確認するうえで活用したい+αの機能が「加重並べ替え」です。デフォルト状態でコンバージョン率を降順に並べ替えると、セッション数の少ないランディングページまで多く上がってきてしまいます。そんな時は並べ替えの種類で「加重」を選んでください。セッション数で重みづけをした加重コンバージョン率で並べ替えができるので、効果につながりやすいページを効率よく見つけることができます。
3.デバイス×商品情報
- ページ:コンバージョン>eコマース>商品の販売状況
- 表示形式:ピボット
ピボット:商品名

コンバージョン>eコマース>商品の販売状況 からデータをピボット表示に切り替えると、商品名が縦軸と横軸に表示されます。次にセカンダリディメンション下のピボットのプルダウンより「デバイスカテゴリ」を選択してください。すると縦軸に商品名が、横軸にdesktop、mobile、tabletの3項目が表示され、デバイスと商品が掛け合わされた結果が表示できます。
ピボット:デバイス カテゴリ

デフォルトでは商品の販売数量が表示されていますが、ピボット指標より商品の収益などの別指標に切り替えることもできます。
ピボットで表示することで、各デバイスごとに簡単に並べ替えできるので、デバイスごとの売れ筋商品ランキングをすぐに見ることができます。PC(desktop)では売れているけれどmobileでは売れていないといった商品があれば、デバイスによって商品の表示や見え方に違いが発生している可能性があります。
デバイスによって乖離があることが必ずしも悪いわけではありませんが、売れ筋商品が特定のデバイスで買われていないのであれば、デバイスごとの見え方の違いやトップページなどの目につく位置に商品が表示されているか確認してみるとよいでしょう。
4.新規・リピート×商品情報
- ページ:コンバージョン>eコマース>商品の販売状況
- 表示形式:ピボット
ピボット:ユーザー タイプ

先程紹介した、3.デバイス×商品情報 と同じ見方で確認できますが、今度はピボットのプルダウンで「ユーザー タイプ」を選択してください。すると縦軸に商品名が、横軸に Returning Visitor(リピートユーザー)、New Visitor(新規ユーザー)の2項目[※]が表示されます。ユーザータイプと商品情報を掛け合わせることで、新規あるいはリピートのユーザータイプごとに購入されている商品を見ることができます。
※Google アナリティクスでは、新規ユーザーは初回訪問のユーザーのこと。2回目以降の訪問時はリピートユーザーとしてカウントされる。
例えば、新規ユーザーの購入が多い商品は、新規顧客の獲得につながりやすい商品の可能性があります。商品掲載ページを広告のランディングページにする、特集ページを作成してSEO対策を強化し、新規ユーザーの流入を増やすことに活用できるかもしれません。またはWeb接客ツールを使って、新規ユーザーに売れ筋商品としてアピールするなど、新規ユーザーへの購入促進施策として活用できます。単に売れ行きだけを見るのではなく、商品の特性も加味したうえで、新規ユーザーの獲得にはどのような施策が最適かを考えましょう。
また、急激に新規ユーザーの購入が伸びた場合は、他サイトやメディアなどで紹介され、話題になっている可能性があります。サイト内コンテンツやメルマガなどで話題の商品として取り上げると、リピートユーザーへの施策としても効果的でしょう。
一方、リピートユーザーによく購入され、新規ユーザーの購入数が少ない商品もあります。例えば単価が高い商品を検討しているユーザーは、購入するまでの検討期間が長いため、繰り返しサイトを訪問します。また、日用品など定期的に購入される商品もGoogle アナリティクス上ではリピートユーザーの訪問が多くなります。ファン向けの商品などもその商品を認知しているユーザーが主に訪れるため、リピートユーザーの割合が多くなるでしょう。
リピートユーザーの割合が8~9割を超えるなど、ユーザータイプが極端に偏ったECサイトの場合、この指標の活用は難しくなります。リピートユーザーが多い場合は、「購入までの日数」の指標が有効でしょう。リピートユーザーはどの程度の間隔を空けて再購入するのか、傾向をGoogle アナリティクスから分析し、有効なタイミングでメールを配信するなどの施策に活用できます。
過去に購入履歴のあるリピーターにとっては購入のハードルが低いですが、新規ユーザーには認知が薄く、初回訪問だけでは商品の魅力が伝わっていない可能性もあります。新規ユーザー向けに、商品の魅力を分かりやすく伝える特集ページを作成することで、購入のハードルを下げることができるでしょう。
また、想定以上に新規ユーザーとリピートユーザーの割合が偏っている場合も問題です。改めて自社でのECサイトの新規ユーザーとリピートユーザーの割合はどのくらいか、確認してみましょう。
おわりに
eコマーストラッキング機能を導入することで、サイト流入から購入までの一貫した情報を数値で可視化した状態で得ることができます。これらの情報を活用することで、ECサイトの課題を迅速に発見でき、施策実施にスピードアップをもたらします。また、収益まで含めて見ることで、より精度の高い効果検証を実施することができるでしょう。
今回ご紹介したおすすめの見方は一部に過ぎません。ECサイトの商材や特性によって活用が難しい場合もありますが、ここで取り上げた見方を参考に、自社のECサイトの特性を踏まえてeコマース機能を活用してください。
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