
アクセス解析ツールの「Google アナリティクス」は非常に機能が豊富で、様々な切り口のデータを得られる、EC担当者必須のツールの1つです。ですが、「ネットショップのこんなデータが見たい」「EC事業部の次回の報告書にこんなレポートを載せたい」など自社に必要な集計データを取得するにはExcelで地道な集計作業を手動で行うなど、手間がかかることがありますよね。
そんな時は、Google スプレッドシートやGoogle データポータルとGoogle アナリティクスを連携すると、まさに欲しかったデータやレポートを得られることがあります。例えば、Google アナリティクスの最大表示件数5,000件を超えるデータを表示したり、ある程度決まったグラフ表示しか選択できなかったものをカスタマイズしたりと、Google スプレッドシートやGoogle データポータルを活用すると日々のレポート作成や、分析の質やスピードをあげることができます。
この記事では、どんなシーンでどのようにGoogle スプレッドシートやGoogle データポータルが活用できるのかを、いくつかの事例を紹介しながら解説していきます。
Google スプレッドシートとGoogle データポータルの違い
活用方法を紹介する前に、Google スプレッドシートとGoogle データポータルがどのようなツールなのか紹介します。
Excel感覚で自由度が高いGoogle スプレッドシート
Google スプレッドシートは無料で利用できるクラウド上の表計算ソフトです。Google アナリティクスと連携させると、ECサイトのアクセス解析データをスプレッドシートに出力することができます。
Google スプレッドシートの長所
- フォーマットを自由にカスタマイズした定期レポートを作成できる
- 細かな条件で絞り込んだデータを出力できる
- 集計したデータをただ出すだけでなく、計算や調整を行える
- IDを切り替えて複数ショップで利用できる
Google スプレッドシートの短所
- ディメンションやフィルタなどの入力が難しい
- 出力したい内容が多いとシート数が膨大になる
- レポートとしてまとめるには、最初の設定に労力がかかる
ビジュアル表現が得意なGoogle データポータル
Google データポータルはGoogle アナリティクスなどのデータベースと連携すると、そのデータをリッチなビジュアルで可視化してくれるツールです。
Google データポータルの長所
- グラフや表などビジュアルで見やすい作りになっている
- 期間の変更や参照元のフィルタなどを即時に反映して集計できる
- テンプレートがあれば複数ショップで再利用できる
Google データポータルの短所
- テンプレートを作成するのに労力がかかる
- 細かなフィルタをかけるのが難しい
- 取得したデータの計算、調整などの設定が難しい
ケース1:前年同月、前月との比較表やグラフを作成する
Google アナリティクスの場合
Google アナリティクス上でも期間を指定して数値を比較することができますが、3つ以上の期間を比較することができません。例えば、2020年8月の実績を前年度である2019年8月と前月の2020年7月と比較をしたいというケースです。まず期間を2020年8月にしてデータを表示して数値を控えたら、次は期間を前月の2020年7月にして、続いて2019年8月にして、といったように都度期間を切り替える必要があり、少し面倒です。

Google アナリティクスで2つの期間を指定して比較
Google スプレッドシートの場合
複数の期間を比較した表を作ったり、グラフを作ったりしたいときには、Google スプレッドシートを活用しましょう。Google スプレッドシートにGoogle アナリティクスのデータを日次や月次単位で出力し、それを集計することで、以下のような表やグラフを簡単に作成できます。

Google スプレッドシートで前年同月、前月と比較した表・グラフを作成した例
スプレッドシートもExcel同様にピボットテーブルを作成することができますので、ピボットテーブルを作って集計するというのも一つの手です。
ケース2:ECサイトのキャンペーンごとの効果を測定する
Google アナリティクスの場合
ディレクトリを商品のカテゴリごとに設計しているというECサイトも多いでしょう。そのようなECサイトの場合、Googleアナリティクスの[行動] > [サイトコンテンツ] > [ディレクトリ] から、カテゴリごとのページビュー数、ページ別訪問数、平均ページ滞在数、直帰率、離脱率を確認することができます。
家具を扱うECサイトのディレクトリ構造例
- ECサイトトップ
- ├商品カテゴリ
- ├テーブル(/table/)
- ├ホームビジネスデスク
- └北欧シリーズダイニングテーブル
- ├椅子(/chair/)
- ├ホームビジネスチェア
- └北欧シリーズチェア
- ├収納(/shelf/)
- ├北欧シリーズ本棚
- ├ベッド(/bed/)
- └ソファ(/sofa/)
- ├テーブル(/table/)
- ├商品カテゴリ
例えば上記のように「テーブル」「椅子」「収納」などの商品カテゴリごとにディレクトリが分かれている場合は、Googleアナリティクスの[行動] > [サイトコンテンツ] > [ディレクトリ] から確認できます。
ですが、ECサイトの設計がそのような構造になっていない場合や、カテゴリを横断したシリーズやキャンペーン別の効果を見るには、Googleアナリティクス上で一画面に表示させることはできません。
セグメントという機能を活用して、特定のページにアクセスしたユーザーやセッションをひとまとめにすることもできますが、一度に選択できるセグメントは最大4件までという制限もあります。
Google スプレッドシートの場合
GoogleスプレッドシートならExcel同様にデータを集計させることができるので、指定したURLの合計値を表示させることが可能になります。
上記、家具のECサイトの例では、「テーブル」「椅子」といった商品カテゴリとは別に、「在宅ワーク特集」に掲載されている家具や「北欧シリーズ」にも掲載されている家具を特集別に集計して効果を検証すると、特集別の効果測定をすることができます。

ディレクトリ別(商品カテゴリ別)に集計した表と任意のグルーピング(特集別)に集計した表の例
ケース3:チャネル、メディア、参照URLなどでドリルダウン分析する
Google アナリティクスの場合
ECサイトでは商品単位でどこから購入されたかなど、Googleアナリティクスを使って調べる場合があります。この時どのチャネルのどのサイトで、どのURLからきたか、またはどのデバイスで、その購入がリピーターかどうかなど、複数の条件を組み合わせて、かつ網羅的に見たい場合、そのままでは見ることができません。
これを見るにはセカンダリディメンションやアドバンスセグメントを設定し、都度条件を切り替えなければいけません。しかし条件を網羅した上で複数回セグメントを切り替えるのは、非常に手間がかかってしまいます。
Google スプレッドシートの場合
Googleスプレッドシートでは2つ以上のディメンションを指定してデータ抽出が行えるため、例えば「1.商品、2.デフォルトチャネルグループ、3.メディア、4.参照URL」といった形でディメンションを設定すれば、一度に、かつ網羅的にデータを見ることができます。
Google スプレッドシートで4つのディメンションを指定して集計した表示例
またスプレッドシートはExcelの様にフィルタによる絞り込みが可能なので、初めにすべてのデータを出力しておけば、後から商品単位、チャネル単位などで条件に合わせて絞り込みを行うことができます。
ただし条件を細かくしすぎたりデータが多くなりすぎるような条件を指定してしまうと、出力に時間がかかったり、余計にデータが見にくくなったりするため注意が必要です。
ケース4:様々な切り口のデータを一度に取得しレポート表示する
Google アナリティクスの場合
Google アナリティクスでECサイトのアクセス状況を確認する際、一般的にチャネル別、参照元/メディア別、ランディングページ別、デバイス別などの概況を把握するためには、都度画面を切り替えて確認する必要があります。
画面を切り替えるだけで集計結果が表示されるので便利ですが、やはり月次、週次、日次で都度確認となると、確認したいレポートの読み込みの度に時間がかかってしまいます。さらに、期間比較を行う場合、セグメント設定、フィルタ設定、セカンダリディメンション設定など、設定を変更する度に再読み込みとなり、意外と時間がかかります。
Google アナリティクスで意外と時間がかかる作業例
- 複数のレポートを横断的に確認する時
- 期間比較、セグメント設定、フィルタ設定、セカンダリディメンション設定を変更する時
- 表示期間をデフォルト表示期間の直近1週間から先月や先週などに変更する時
- ランディングページなど表示件数が多いレポートにおいて、表示件数をデフォルトの10件から切り替える時
Google スプレッドシートの場合
そういったルーティン業務の作業工数を少しでも軽減させるには、Google スプレッドシートが活用できます。初期設定さえしておけば、一度に必要な情報を確認することができます。またスケジューラ機能を使うことで、毎朝○時に集計を走らせるなど自動化もでき、読み込み時間自体をなくすことも可能です。
Google スプレッドシートで作成したレポートをスケジューラで自動化する画面
ケース5:自社のレポートフォーマットに合わせたアウトプットにする
Google アナリティクスの場合
社内報告用のECアクセスレポートとして、一定のフォーマットで報告するケースが多いでしょう。Google アナリティクスの画面キャプチャや、CSVデータをダウンロードしてExcelで作成したグラフをパワーポイントに貼り付ける作業だけでも、意外と時間がかかるのではないでしょうか。フォントサイズやカラーなど、見栄えも調整すれば、さらに時間がかかります。
Google データポータルの場合
こちらはGoogle データポータルで解決することができます。Google アナリティクスから取り込んだデータをグラフ化できることは前述のとおりですが、自社にとって必要なデータのみを抽出し、自由にダッシュボードを作成することが可能です。
また、一度レポートのテンプレートを作成してしまえば、次回以降は対象期間を変えるだけでレポートを作成でき、さらに複数の関係者と画面を共有することもできます。Google スプレッドシートほど細かな設定はできませんが、ECサイトの概況を確認するには十分な資料を作成できますので、これまで都度、ExcelやPowerPointに変換していた業務を大幅に短縮することが可能です。
デザインテンプレートも豊富に用意されていますので、ぜひ活用してみてください。
Google データポータルのデザインテンプレート
ツールを活用して自動化と効率化を
Google アナリティクス、Google スプレッドシート、Google データポータルには、それぞれ得意なこと、不得意なことがあります。見せたい情報、やりたい分析に応じて最適なツールを選び、ECサイトのアクセス解析レポートの作成や分析改善の質を向上させていきましょう。
スプレッドシートやデータポータルを活用したECサイトのアクセス解析の方法を相談したい、そもそもECサイトのレポート作成の手間を削減したいという課題をお持ちであれば、運用代行サービスを活用するのも一つの方法です。HIT-MALLの運用代行サービスでもレポート作成を行っていますので、レポート作成やアクセス解析に課題をお持ちの方はご相談ください。
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